このページのポイント
- 股関節は、大きな負荷のかかる体の土台。痛みの原因には、軟骨がすり減ることや骨盤の形状が関わっていることが多く、変形性股関節症など様々な疾患が存在します。
- 病院での診察は、問診・身体診察・レントゲンを基本とし、必要に応じてMRIやCT検査も組み合わせます。
- 股関節の治療はリハビリなどの「保存療法」から始め、改善しない場合は「人工股関節置換術」などの手術も選択できます。
股関節の役割と加齢による変化
股関節には、普段からかなりの負荷がかかっています。どのくらいだと思いますか?
通常歩行では体重の3~4.5倍、ジョギングで4~5倍、階段を昇る時には6.2~8.7倍もの負荷がかかるんですよ。


なぜ、このように大きな負荷がかかるのでしょうか。
それは、股関節は体のなかで最も大きな関節のひとつであり、上半身と下半身をつなぐ役割をしているからです。
歩く、立つ、ジャンプするといった活動の影響をダイレクトに受ける部位であるため、股関節に痛みや違和感などのトラブルが起きやすいんです。
股関節の痛みの原因
股関節の痛みを引き起こす原因として、特に多いのが軟骨のすり減りです。
股関節は、骨盤側のくぼみに太ももの骨の先端がはまり込む構造になっていて、それぞれの骨の表面は軟骨で覆われています。
この軟骨がクッションになることで、骨同士が直接ぶつからず、股関節を滑らかに動かせるわけです。
軟骨は、スニーカーの底にあるクッション(ゴムやエア)のようなものです。
歩くときの衝撃を吸収して、足が痛まないように守ってくれています。
ただ、お気に入りの靴を何年も毎日履いていると、かかとのゴムがすり減って薄くなり、地面の硬さがダイレクトに響くようになりますよね。
股関節の軟骨も同じで、長年の負担で薄くなると、骨に負担がかかって痛みが出てしまうんです。
股関節の病気では、足の付け根に痛みを感じる方が多いですね。
ただし、「股関節が痛い」と思っていても、実際には腰の病気や神経の圧迫など、別の場所に原因があることも珍しくありません。
原因がはっきりしない痛みが続く場合は、股関節だけでなく腰なども含めて詳しく調べることが大切です。(*1)
股関節にかかる負担の大きさには、驚かれる患者さんも多くいらっしゃいます。
歩行するだけでも体重の数倍の負荷がかかるため、クッションである軟骨の経年変化は避けられない側面があります。
ただ、軟骨がすり減っているからといって、「もう治らない」と諦める必要はありません。
また、痛みの原因が股関節自体にあるのか、腰など別の場所にあるのかを画像検査などで正確に見極め、初期段階から生活指導やリハビリを行うことで、ご自身の関節を長く健康に保つことが大切です。
(*1) European Spine Journal 2013 Apr;22(4):721-6.
股関節の違和感や痛みでお悩みの方は、専門医の診断を受け、ご自身の状態を正しく把握することがとても大切です。
以下の初診予約ボタンからお気軽にご相談ください。
股関節が痛いときに考えられる病気
股関節の痛みを引き起こす病気には、代表的なものがいくつかあります。ひとつずつ見ていきましょう。(*2)
変形性股関節症
股関節の軟骨が少しずつすり減り、関節のすき間が狭くなったり、骨が変形したりする病気です。
初めのうちは、立ち上がるときや歩き始めに、足の付け根が少し痛む程度のことが多いんですが、進行すると、長く歩けない、階段の上り下りがつらい、靴下を履きにくい、足の爪を切りにくいといったように、日常生活にも支障が出てきます。
原因は加齢のほか、生まれつきの病気が関係していることもあります。
特に、股関節の受け皿がもともと浅い「臼蓋(きゅうがい)形成不全」など、生まれつきの骨格や股関節の形が関係している方も少なくありません。
臼蓋形成不全
臼蓋形成不全とは、股関節の骨盤側にある「臼蓋」の発育が不十分なため、股関節がうまく安定しない状態のことです。
「股関節のはまりが浅い状態」といえば、わかりやすいかもしれませんね。
本来は広く分散するはずの力が一部に集中してしまい、軟骨などが傷みやすくなってしまうんです。


若い頃は症状がほとんどないことも多いのですが、長年負担が積み重なることで、足の付け根の痛みや股関節の違和感が出てくることがあります。
また、股関節唇(こかんせつしん)損傷や変形性股関節症の原因になったりもします。
臼蓋形成不全は日本人女性に比較的多いことが知られていて、成人してから股関節痛をきっかけに見つかることも多いんですよ。
発育性股関節形成不全
発育性股関節形成不全は、赤ちゃんの股関節が十分に発育せず、関節が不安定になっていたり、脱臼していたりする状態です。
以前は「先天性股関節脱臼」と呼ばれていました。
ただ、出生後の抱き方や脚の姿勢、成長の過程なども関係することがわかってきたため、現在は発育性股関節形成不全という言葉が使われています。
乳児期に見つかり、適切な治療を受ければ改善が期待できます。
ただし、股関節の形によっては成長後も負担がかかりやすく、大人になってから変形性股関節症につながることもあります。
股関節唇損傷
股関節の受け皿である臼蓋の縁にある「股関節唇(こかんせつしん)」という組織が傷つく病気です。
股関節唇には、大事な役目が2つあります。
ひとつは、受け皿を深くして股関節を安定させること、もうひとつは関節の中の圧を保って、股関節を滑らかに動かすことです。


股関節唇は、水筒のふたについているゴムパッキンのようなものと考えると、イメージしやすいかもしれません。
水筒はゴムパッキンがあることで、ふたと容器が直接こすれ合わず、ぴったりとかみ合いますよね。
ただ、ゴムパッキンも長く使っていると、少しずつ薄くなったり、弾力を失ったりします。
股関節唇が傷つくと、初期には「なんとなく股関節がつまる」「足の付け根が痛い」という程度の症状が出て、進行すると歩行や運動に支障が出る場合があります。
大腿骨近位部骨折
大腿骨近位部骨折(だいたいこつ きんいぶ こっせつ)は、股関節に近い、太ももの骨の付け根部分に起こる骨折です。
骨粗しょう症で骨がもろくなっている高齢の方に多いですね。
転倒して尻もちをついたことなどをきっかけに起こりますが、骨がかなり弱っている場合は、軽くひねっただけでも骨折することがあります。
この部分を骨折すると、強い痛みが出て、立ったり歩いたりすることが難しくなります。
高齢の方では、動けない期間が長くなると筋力が急速に落ち、寝たきりや認知機能の低下につながることもあります。
できるだけ早く治療を行い、早期にリハビリを始めることがとても重要なんですよ。
特発性大腿骨頭壊死症
特発性大腿骨頭(だいたいこっとう)壊死症は、太ももの骨の先端にある「大腿骨頭」への血流が悪くなり、骨の一部が壊死してしまう病気です。
初期には、ほとんど症状がないこともあります。
ただし、壊死した骨はだんだんもろくなるため、進行すると体重を支えきれず、骨頭がつぶれ始めます。
そうなると、足の付け根に強い痛みが出たり、股関節を動かしにくくなったりするため、病気に気づくのです。
病名に「特発性」とあるように、原因がはっきりわからない場合も少なくありません。
とはいえ、まったくの不明というわけでもなくて、ステロイド薬を大量に使っている方や、お酒をたくさん飲む方では、発症しやすくなることがわかっています。
これらが必ず壊死につながるわけではなく、あくまで「なりやすさを高める要因のひとつ」と考えていただくとよいでしょう。
関節リウマチ
関節リウマチは、免疫の異常によって関節に炎症が起こる病気です。
本来は体を守るはずの免疫が、自分自身の関節を誤って攻撃してしまうんです。
関節の腫れや痛みが続き、進行すると軟骨や骨が少しずつ壊れていきます。
関節リウマチというと、手指や手首、足の関節に起こる病気とイメージする方も多いかもしれませんね。
でも実は、股関節に炎症が及ぶこともあるんですよ。
股関節が傷んでくると、歩くときに痛んだり、足を曲げたり開いたりしにくくなったりします。
さらに進行すると、立ち上がりや階段の上り下り、靴下を履くといった日常動作にも支障が出てくるため、早めに治療を始めるようにしましょう。
最も多い疾患とは
これらの疾患のうち、特に患者さんの数が多いのが変形性股関節症です。
症状がない方も含め股関節のレントゲン検査をしてみると、男性で0~2.0%、女性で2.0~7.5%の人に変形性股関節症が見つかると言われています。
その数は、日本でなんと約500万人。(*3)
65歳以上の女性では約4人に1人、男性では7人に1人という報告もあるんですよ。
その他の疾患・症状
ちなみに、「股関節が鳴るのですが、これは病気でしょうか」と心配になる患者さんもいらっしゃいます。
この場合、筋肉や腱が骨の出っ張りに引っかかって音が出る「弾発股」(だんぱつこ)や、関節内の気泡がはじける音が考えられます。
「音が鳴る」だけではそれほど心配はいりません。
ただし音に加え、痛みや違和感がある、歩きにくい、可動域が狭くなってきたなどの変化が見られる場合には、変形性股関節症、臼蓋形成不全などの病気が背景にある可能性があります。
念のため、受診すると良いでしょう。
また、急な運動や長時間のデスクワークなどでお尻の周りの筋肉に過度な負担がかかり、筋肉痛が生じることもあります。
お尻周りが痛むので「股関節の病気かも……」と不安になる方も多いと思いますが、この場合は病気と違って、安静にしたり軽いストレッチをしたりすることで良くなる場合が多いので、あまり心配はいりませんよ。
股関節痛の原因となる病気は多岐に渡りますが、特に日本人の変形性股関節症は、臼蓋形成不全に起因する二次性のものが多いのが特徴です。
また、若い世代の運動時痛では股関節唇損傷、急激な疼痛では大腿骨頭壊死症や、外傷があれば骨折など、年齢や痛みの出方によって疑うべき病態は異なります。
また、本文にある「弾発股」のように経過観察で良いものから早急な加療が必要なものまで様々ですので、自己判断せず専門医の診断を受けることが大切です。
(*2) 一般社団法人 日本股関節学会
(*3) 日本医事新報社
「まだ大丈夫」「年齢のせい」と我慢せず、手遅れになる前に専門医の診察を受けてみましょう。
股関節の構造
股関節とはどんな構造で、どんな動きを担っているのかについてもお話しておきましょう。
股関節は、骨盤と太ももの骨である大腿骨をつないでいる関節で、骨盤側には「臼蓋(寛骨臼)」という受け皿があり、そこに大腿骨の先端にある丸い「大腿骨頭」が、すっぽりとはまり込む構造になっています。


股関節のはたらき
股関節は、よく「ボールと受け皿」に例えられます。
寛骨臼という受け皿の中で、大腿骨頭というボールが滑らかに動くので、
- 曲げる(屈曲)・伸ばす(伸展)
- 外側に開く(外転)・内側に閉じる(内転)
- 外側にひねる(外旋)・内側にひねる(内旋)
といった具合に、いろんな方向へ大きく動かせるからです。
このことから、「球関節」(きゅうかんせつ)と呼ばれています。
股関節を支えるさまざまな組織
股関節は上半身と下半身の継ぎ目にあり、体重を支える関節でもあります。
立っているだけでも股関節には負担がかかりますし、歩行時や階段昇降時にはさらに大きな力が加わりますよね。
骨と骨がぶつかり合えば、その衝撃でどんどん骨は傷つき、変形が進んでしまいます。
痛みも強くなるでしょう。
その負担を和らげてくれているのが、先ほどお話しした軟骨のクッションです。
ただ、股関節を支えているのは軟骨だけではありません。
- 臼蓋の縁にある股関節唇
丸い骨頭が安定してはまり込むのを助けています。 - まわりを取り囲む強い靱帯
関節が動きすぎないようにブレーキをかけ、脱臼を防いでくれています。 - お尻や太ももの筋肉
股関節を外側からしっかり支えています。
つまり股関節は、軟骨・関節唇・靱帯・筋肉といったさまざまな組織が、絶妙なバランスで働くことで成り立っています。
だからこそ、どれか一つにトラブルが起きるだけでも、痛みや動かしにくさにつながってしまうんです。
股関節に病気や故障が起こりやすいのは、それだけ構造が複雑で、担っている役割も大きいからなんですね。
股関節の病気と「QOL」の関係
もう一つ知っておいていただきたいことがあります。
股関節の病気が進むと、生活の質、いわゆるQOLが大きく低下することです。
特に末期の変形性股関節症では、単に「股関節が痛い」というだけでなく、日常生活のさまざまな動作が難しくなってきます。
注意したいのは、動作が制限されることは、身体面だけの問題ではないということ。
- 外出がおっくうになる
- 人に頼る場面が増える
- これまで普通にできていたことができなくなる
そうした積み重ねは、気持ちの落ち込みや不満にもつながってしまいます。(*4)
つまり股関節の病気は、痛みそのものだけでなく、QOLを下げる大きな要因になるのです。
だからこそ、痛みを我慢し続けるのではなく、どの動作で困っているのか、生活の中で何ができなくなってきたのかを含めて、早めに医師へ相談してほしいですね。
(*4) 理学療法学Supplement 2012 (0), 48100212-48100212, 2013
股関節が痛むときの検査方法
医師による問診
病院ではまず、問診で痛みについて詳しく聞くところから始めます。
「いつ頃から痛みますか?」「急に痛くなりましたか、それとも少しずつですか?」——こんなふうに伺っていくんですね。
痛む場所も大切です。
足の付け根なのか、お尻側なのか、太ももや膝のあたりまで響くのかによって、考えられる病気が変わってきます。
どのような動作で痛みが出るのかも重要な手がかりになります。
歩き始めに痛むのか、長く歩いたあとに痛くなるのか、どんな動作で痛みが出るのか、じっとしていても痛いのか、夜中に痛みで目が覚めることがあるのかも確認していきます。
患者さんにとっては何気ない変化でも、診断するうえではとても大切な情報になります。
そのうえで、実際に股関節の動きを見ていきます。
脚を前に曲げる、外側に開く、内側や外側へひねるといった動作を行い、どの方向で痛みが出るのか、どのくらい動かせるのかを確認します。
股関節の病気では、痛みだけでなく、関節の動く範囲が狭くなることも多いんです。
特に、股関節を内側にひねる動きや外側に開く動き、後ろに引く動きが制限されている場合には、変形性股関節症を疑うきっかけになります。


歩き方や姿勢なども見ます。
痛みをかばって体が傾いていないか、左右で歩幅に差がないか、片脚で体重を支えられるか、脚の長さに左右差がないかなどを確認するんです。
股関節の状態が悪くなると、無意識のうちに痛い側の脚に体重をかけないような歩き方になることがあるので、体の傾きは重要なポイントなんですね。
画像検査・その他の検査
その後、必要に応じて画像検査に進みます。
基本になるのはレントゲン検査で、股関節の骨の形や関節の隙間を確認します。
変形性股関節症では、軟骨がすり減ることで関節の隙間が狭くなったり、骨が硬くなったり、骨棘(こつきょく)と呼ばれる骨の出っ張りができたりします。
また、臼蓋形成不全のように、もともと骨盤側の受け皿が浅いかどうかもレントゲン検査で確認できます。
股関節の全体像を把握するうえでとても重要な検査なんです。
ただし、レントゲン検査だけではわからない病気もあります。
そのため、必要があればMRI検査やCT検査を行います。
- MRI検査
骨だけでなく、軟骨、股関節唇、骨の内部の変化、炎症の有無などを確認するのに役立ちます。
たとえば、特発性大腿骨頭壊死症や股関節唇損傷などの初期は、レントゲン検査でわかりにくいことがあるため、MRI検査によって詳しく評価することが大切です。 - CT検査
CT検査は骨の形や変形をより立体的に確認したいときに役立ちます。
骨のかぶり具合や変形の程度、手術を検討する場合の骨の状態などを詳しく見ることができ、特に、骨の構造を細かく把握したい場合に有用です。 - 血液検査
血液検査を行うこともあります。
股関節の痛みの中には、関節リウマチなどの炎症性疾患や、感染による関節炎が関係しているケースもありますからね。
炎症反応やリウマチに関連する項目などを調べ、画像検査だけでは判断しにくい病気が隠れていないかを確認するんです。
このように、股関節の痛みの原因は、問診、診察、画像検査などを組み合わせて探っていきます。
動き方、歩き方、骨や軟部組織の状態まで総合的に見ることで、その方に合った治療方針を立てていくことができるんです。
病院に行くと「すぐレントゲン」と思われがちです。もちろんレントゲンは骨の形態や関節裂隙を把握するために基本の検査ですが、その前段階である問診や身体診察もとても大事です。「夜間に痛むか」「どの動作で詰まるか」といった患者さんのお話や、股関節の可動域・歩行姿勢などが、適切な画像検査を選ぶために重要な情報です。検査は怖いものではなく、痛みの原因を突き止めて治療計画を立てるために大切なプロセスなので、安心して受診して下さい。
股関節の疾患に対する治療法
股関節の治療をどう進めるかは、実はひとりひとり違います。
どんな病気が原因なのか、どこまで進んでいるか、痛みの強さ、年齢、それに普段どんな生活をされているか。
そうしたことを聞きながら決めていきます。
たとえば、変形性股関節症なのか、股関節唇損傷なのか、特発性大腿骨頭壊死症なのかによって、選ぶ治療は異なります。
また、同じ病気であっても、初期の段階なのか、ある程度進行しているのかによって、治療の選択肢は変わってくるんですね。
保存療法
多くの場合は、まず保存療法から始めます。
保存療法とは、手術をせずに、薬などで痛みを和らげたり、運動で股関節の動きを保ったり、病気の進行をできるだけ抑えたりする治療のことです。
それでは、変形性股関節症を例に挙げてお話ししますね。
- 生活指導
保存療法では、はじめに股関節の負担を減らす生活指導を行います。
深くしゃがみ込む、床から立ち上がる、重い荷物を持って歩くといった動作は股関節の負担になり、症状を悪化させるリスクがあるので、控えた方が賢明です。
それから、あぐらや正座などの姿勢も股関節痛が増す原因になるので、できれば椅子を使う洋式の生活に変えていただきたいですね。 - 体重管理
体重管理も大切です。股関節は体重を支える関節ですから、体重が増えるほど関節にかかる負担も大きくなります。
もちろん、無理なダイエットをする必要はありません。
この悪循環を防ぎ、筋肉を柔らかくする方法としておすすめなのが、無理のない範囲で股関節を動かすことです。
硬くなった股関節の柔軟性を保ち、股関節まわりの筋肉を鍛えて安定性を高めるためにも、痛みの状態を見ながら継続して体を動かしていくことが大事なんですね。
ただし、痛みを我慢して無理に動かすと、かえって炎症が強くなったり、症状が悪化したりすることがありますよ。
そのため、自己流で頑張りすぎるのではなく、医師や理学療法士の指導のもとで、自分に合った運動を行いましょう。
- 運動療法・ストレッチ・リハビリテーション
これも治療の大きな柱になります。
股関節が痛いと、歩いたり体を動かしたりする機会が減り、周囲の筋肉が少しずつ弱ってしまいます。
さらに、動かさないことで股関節周りの筋肉も硬くなり、動かせる範囲が狭くなって、ますます脚を動かしにくくなるという悪循環に陥りやすいんです。 - 薬物療法
痛みがある場合には、消炎鎮痛薬などを使った薬物療法を行うこともあります。
飲み薬のほか、湿布や塗り薬などを使いながら、痛みをコントロールしていくんですね。
手術療法
保存療法によって症状が落ち着く方もいらっしゃいます。
ただし、病気が進行している場合には、こうした治療を続けても痛みが十分に改善しないことがあります。
特に、「痛くて買い物や外出ができない」「好きだった旅行や趣味をあきらめている」「日常生活に大きな支障が出ている」といった場合には、手術も選択肢として検討します。
手術を考える際には、画像上の変化だけでなく、痛みによってその方の生活がどのくらい制限されているかが大切な判断材料になります。
次に、変形性股関節症に対する股関節の手術についてお話ししていきますね。
代表的な手術には、骨切り術と人工股関節置換術があります。
- 骨切り術
骨の向きや位置を調整することで、股関節にかかる負担を減らす手術のこと。
比較的若い方や、関節の状態がまだ保たれている方が検討されることが多いですね。 - 人工股関節置換術
傷んだ股関節を人工の関節に置き換える手術です。
治療の目的は、股関節の痛みを軽くし、歩行や日常動作の改善を目指すことです。
人工股関節置換術について
以前は「人工股関節には寿命があり、手術をした時の年齢によっては再手術が必要」と言われていました。
しかし近年では人工股関節置換術の術式も人工股関節自体も急速に進化しており、60代や70代の患者さんはもちろん、私の患者さんでも50代前半で人工股関節置換術を受ける方もいらっしゃいます。
それだけ人工股関節の寿命が延びており、生涯にわたって使い続けることができるだろう、と予測できるからなのですね。


人工股関節置換術を受けることのメリットとして、「股関節痛が改善される」ということが挙げられますが、もうひとつ見逃せないのが、「生活の質が大きく改善される」ということです。
2026年に興味深い研究結果が報告されています。
変形性股関節症で初めて人工股関節全置換術を受けた患者さんを対象に研究したところ、手術前には一般の方と比べて生活の質が大きく低下していました。
しかし、手術から1年後には一般の方と同じか、それを上回るレベルまで回復していたというのです。
さらに関心を惹くのは、85歳を超える高齢の方でも、大きな改善がみられたということです。
年齢だけで治療をあきらめる必要はなく、痛みや生活への支障が大きい場合には、手術によって歩きやすさや日常生活のしやすさを取り戻せる可能性があるんですね。(*5)
股関節の治療で大切なこと
股関節の治療では、今の痛みだけでなく、これからの生活をどう守るかという視点が大切です。
保存療法で様子を見るのか、リハビリを強化するのか、薬や注射で痛みを調整するのか、手術を検討する段階なのか。
症状や画像検査の結果、生活で困っていることを総合的に見ながら、その方に合った治療を選んでいくことが重要なのです。
股関節治療の基本は保存療法ですが、改善しない場合や日常生活への支障が大きい場合は手術が非常に有効な選択肢です。
近年は人工関節の耐久性向上に加え、筋肉を切らない低侵襲手術が進歩し、術後の疼痛軽減や早期社会復帰が可能になりました。
年齢だけで諦める必要はないですし、「また旅行に行きたい」「痛みがない日常生活を取り戻したい」という目的に合わせ、最適な時期と治療法を一緒に考えていきましょう。
(*5) Bone Jt Open. 2026 Jan 22;7(1):90-101.
股関節の状態を正しく知り、ご自身のライフスタイルに合わせたベストな選択をするために、専門の医師に相談することが重要です。
まとめ
股関節は、立つ・歩く・座るといった日常生活を支える大切な関節です。
そのぶん負担も大きく、軟骨のすり減りや骨の変形、股関節唇の損傷、骨折、炎症などによって痛みが起こることも少なくありません。
股関節の病気が進行すると、歩行だけでなく、靴下を履く、爪を切る、床に座るといった動作にも支障が出て、生活の質が大きく低下します。
痛みを年齢のせいと決めつけず、違和感が続く場合は早めに受診し、原因に応じた治療を検討しましょう。
健康寿命を伸ばし、最後まで自分の足で歩き続けるためには、日常生活の質(QOL)に直結する股関節の健康維持は欠かせません。
痛みを引き起こす病態は様々ですが、我慢したり自己判断で放置したりすると、関節の変形が進行し、筋力低下や歩行障害を招く恐れがあります。
現代の股関節治療は、保存療法から最新の低侵襲手術まで、選択肢が大きく広がっています。
適切なアプローチを行えば痛みを克服し、諦めていた趣味や旅行に再び挑戦することは十分可能です。
治療のゴールは単に痛みを抑えることではなく、皆様が自分らしい生活を取り戻すことです。
まずは一歩踏み出して、整形外科の扉を叩いてみて下さい。
早めの受診で、将来の関節の健康を守りましょう
股関節の痛みや違和感がある方は、自己判断せずに正しい診断を受けることが大切です。
信頼できる専門医のもとで最適な治療法を一緒に考えていきましょう。
当院では、股関節・ひざ関節専門の医師が丁寧に診察・ご説明いたします。まずはお気軽にご相談ください。

